SPR (Stack to Pot Ratio)とはその名の通り、スタックとポットのサイズ比を表す数字になります。
SPRという概念を使用すれば、トーナメントとキャッシュゲーム双方でフロップ後のアクションを簡単にする事ができます。
特に、トーナメントで気が付いたら自然死していたという経験はあるでしょうか?MTTはアンティに加えブラインドの上昇もあるので、常にこういったプレッシャーと戦う事になりますのでSPRは効果的です。
SPRについて説明する前に、イフェクティブスタックについて説明していきます。
英語ではEffective Stackと書き、そのゲームで使われるチップの最大値を表します。ここではイフェクティブスタックと表記します。
例えば、60BB持ちのプレイヤーと250BB持ちのプレイヤーがいたとします。この2人のプレイヤーが戦う場合、ポットに入るのは最大でもお互い60BBまでなので、この場合のイフェクティブスタックは60BBとなります。
そして、SPRとはイフェクティブスタックをフロップでのポットサイズで割った数字です。
例えば、1ドル/2ドルのテーブルで、全員がスタック200ドル持っているとします。
あなたレイズ6ドル→相手コール→SBBBフォールド
の場合、ポットは15ドルでスタックは194ドルです。
この時のSPRは194÷15=12.9となります。
つまり、残っているイフェクティブスタックは、ポットの12.9倍という事です。
ではこのSPRをどのように解釈すればいいのでしょうか?
SPRとは、リスクと報酬の比率と解釈する事ができます。
ポットのチップは報酬で、イフェクティブスタックは潜在的なリスクです。
つまり、SPRが大きければ大きいほど、リスクが大きくなると捉える事ができます。
また、SPRは基本的にフロップでのアクションに関わるものです。
SPRの使い方
SPRをコントロールする事で、フロップ後のアクションを簡単にする事ができます。
- SPRが低い場合:ポットサイズが大きく、イフェクティブスタックが小さい場合です。
この場合、フロップ後にあなたが意思決定する余地は殆どありません。リスクに対して報酬が十分に大きい為です。 - SPRが高い場合:ポットサイズが小さく、イフェクティブスタックが大きい場合です。
この状況では、フロップからリバーまでそれぞれをプレイするのに十分なスタックがあり、あなたが意思決定する余地が大きく難しい決断を迫られる場合もあります。
ハンドによって、適切なSPRは異なります。どういったハンドがどういったSPRに適しているかを知っていれば、プリフロップでベットまたはレイズ、フォールドする事によりポットサイズをコントロールする事ができます。
A♣K♦でのSPR
A♣K♦の様なハンドは、困難な状況に陥る事がよくあります。
例えば、K♣Q♦9♥のようなボードでトップペアを作ったとしましょう。現状あなたが持っているハンドは恐らくベストハンドだと思いますが、ボードは非常にコネクトしています。こういった場合、フロップでベットして相手を降ろしてしまいたいと感じるはずです。
こういった状況でのSPRを考えて見ましょう。
- SPRが高い場合
ポットサイズが10ドルで、イフェクティブスタックが200ドルあるとします。SPRは20ですね。
あなたがフロップでベットし、レイズされたとします。この時、ベストハンドを持っているはずですが、トップペアだけでそこまで多くのリスクを取りたくないのでトリッキーな状況に置かれます。
もし、フロップ以降どこかでオールインされた場合は、ベストハンドを持っていないでしょう。つまり、SPRが普通~高い状況に居る際には、こういったトップペアをプレイするのは少し難しいはずです。
- SPRが低い場合
ポットサイズが10ドルで、イフェクティブスタックが30ドルであればどうでしょうか?SPRは3ですね。
先程と同じく、ベットにリレイズされたとしても取るべきアクションは非常に簡単です。イフェクティブスタック以上のベットは絶対に起こりえないので、コールやリレイズオールインを返す事ができます。
もちろん相手がより良いハンドを持っている可能性はありますが、リスクが低い状況という事とポットコミットしているという事を考えればオールインは遥かに簡単に決断できます。
つまり、全く同じハンドを持っているにも関わらず、SPRによってあなたが取れるアクションは大きく変わります。
ハンドとSPR
SPRの大まかな目安ですが、
- SPRが低い=0-6
- SPRが普通=6-17
- SPRが高い=17以上
とします。もちろんあくまで目安であり、相手がルースかタイトかという事等にも依存する事を忘れないでください。
低いSPRを好むハンド
強いハンドの中にも、AKのトップヒットのような低いSPRが好ましいハンドがあります。
- トップペア
- オーバーペア
- ボトムツーペア
これらのハンドでポットが大きくなればなるほど、あなたがアンダードッグになる可能性が高まります。低いSPRでこのハンドをプレイできると意思決定が遥かに簡単になります。
こういったモンスターハンドではないけど強いハンドでポットコミットする事は避けたいはずです。
普通のSPRを好むハンド
- トップツーペア
- セット
- 強いドロー
- フラッシュ/ストレート
これらのハンドは上で挙げたハンドより強く、アンダードッグになる可能性が低くなります。SPRが中間位にキープできれば、収益にプラスとなるオールインができるはずです。
投機的なハンド (スモールポケットやスーコネ)をプレイする時は相手のスタックが十分に大きい場合という鉄則はこれが理由です。普通から高いSPRであれば、フロップでモンスターハンドを作った際により収益を生める為です。
高いSPRを好むハンド
- セット
- 非常に強いドロー
- ナッツフラッシュ、ナッツストレート
これらのハンドは殆どナッツです。あなたがポットを取る事は殆ど確定しており、滅多にアンダードッグになりません。SPRが高ければ、それだけ相手からチップを獲得するチャンスが多いのです。ドローハンドだとしても、ドローを完成させるまでにより多くのアクションが控えているので、より簡単に完成させる事ができます。
SPRの調整
フロップでより好ましいSPRを得るためには、プリフロップでのアクションが重要です。あなたは自分のハンドに応じてプリフロップでどのようにアクションするかという事を考える必要があります。
プリフロップでのレイズサイズ
1ドル/2ドルのイフェクティブスタック100ドルの場合で考えて見ましょう。
あなたは[invalid notations]AsKd[invalid notations]を持っており、BTNでMPからの3BBレイズに直面しています。
この時あなたがコールに留めてしまうと、フロップ後は以下のような状況になります。
ポットサイズ:15ドル
イフェクティブスタック:94ドル
SPR=94÷15=6.3
このSPRは少し高く、フロップでトップペアをヒットしたとしても、オールインしたり、オールインにコールしたりする事は躊躇われます。相手がタイトプレイヤーであればなおさらです。
しかし、ここで6BBへの3betを選択したとすると、フロップ後の状況は以下です。
ポットサイズ:27ドル
イフェクティブスタック:88ドル
SPR=3.3
このSPRだと、状況に応じてオールインやオールインコールが遥かに簡単です。また、ポットを大きくしているお陰で、ターンまでに全てのチップはポットに入るはずです。リバーでブラフされて難しい局面に陥るといった事も避ける事ができます。
プリフロップでフォールド
55のようなスモールポケットを持っている時、イフェクティブスタックが小さければSPRも小さくなり、レイズにコールする事は有益なプレイではなさそうです。
SPRが低いという事は、インプラインドオッズも低いという事ですので、スモールポケットやスーコネ等はフォールドしてしまった方がいいでしょう。
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