M-Ratio、M値とは、トーナメントにおいて自分があと何周生き長らえるかという事を表す指標です。
トーナメントプレイヤーであれば全員、早く何かアクションしなければ飛んでしまうといったプレッシャーを感じた事があるはずです。ハンドは満足とは言えないが、ブラインドの上昇速度が速く、この機会を利用しなければ絶望的なショートスタックになってしまうといった状況です。
もしチップが十分にあれば、こんな心配はなかったはずです。またこんなマージナルな状況でアクションはパスできたはずです。
しかし、残念ながらキャッシュゲームとは違い、トーナメントではこういった事が起こります。
トーナメントにおける最善の判断をするためには、常にブラインドレベルとイフェクティブスタックを考慮する必要があります。スタックがブラインド対比でどれだけあるのかという事です。
これを数値化したのがM値です。M値は、スタックがブラインドとアンティに対して何倍あるかという簡単な式で表す事ができます。
M値=スタックサイズ÷(SB+BB+アンティ×人数)
例えば、スタックサイズが1000あり、SB/BBは10/20、アンティは1とします。10人テーブルだとして、M値はいくらでしょうか?
M値=1000÷(10+20+1×10)=25
となります。
この25という数字は、「ブラインドもアンティも変化しなければ、フォールドし続けてもあと25周は耐える事ができる」と解釈できます。
もちろん、実際はそうではありません。ブラインドもアンティも上昇するので、M値はどんどん減少していきます。
またM値が同じ25でも、普通のトーナメントとハイパーターボのトーナメントではわけが違います。前者はブラインドの上昇が普通の時間間隔で行われ、後者は凄まじいスピードでブラインドの上昇が行われます。
M値に基づく意思決定
M値が計算できるだけではそこまで有用とはいえません。ではM値を使用してどのような意思決定を行えばいいのでしょうか?
Dan Harringtonというプロが、M値の値によって異なるガイドラインを示しています。
- M値が20以上=安全圏
自分が好きなプレイスタイルで戦う事ができる。良いハンドを待つ事もでき、より投機的なハンドで参加しアグレッシブにプレイする事もできる。いくらかの損失を出す事は大きな問題ではなく、イフェクティブスタックが十分に大きい状況はある程度の自由を与えてくれる。
- M値が10~20=少しだけ危険
少しプレッシャーを感じ始める。プレイするハンドとポジションを探し始める必要がある。安全圏にいた時にプレイできた投機的なハンドは、イフェクティブスタックが小さくなる事で戦いやすさが低下してくる。
- M値が6~10=危険
プレッシャーが大きくなり、チップを無駄にできなくなる。コールドコールは危険になり始める。このゾーンでの目標はオリジナルレイザーになり、フォールドエクイティも期待する事。
- M値が5以下=超危険
トーナメントにおけるAll-in or Foldのステージ。このゾーンではプリフロップでオールインかフォールドしかできない。
- M値が1以下=トーナメント終了
ここは絶対に避けるべきゾーン。自然死まであと数ハンドしかなく、ダブルアップしてもM値は高くならない。ここから復帰するためには大きな運が必要。
調整後M値 (Adjusted M-Ratio)
M値はテーブルが何人だろうと機能します。しかし、テーブルの人数が違う場合は同じM値だとしても状況が異なります。
例えばM値が5だとします。この時、10人テーブルと5人テーブルではどちらの方がプレイできるハンドは多いでしょうか?もちろん10人テーブルの方が2倍多くのハンドをプレイする事ができます。
これを考慮したものが調整後M値です。テーブルの人数が変わるのは大抵ファイナルテーブル直前ですが、こういった時には効果的です。
調整後M値=M値×(テーブル人数÷10)
普通のテーブルが10人だとすると、5人テーブルになっていれば普通のM値の半分しかありません。
例えば、イフェクティブスタックが1000ある時、ブラインドが20/40、アンティ2とします。5人テーブルだとすると、調整後M値は以下の様になります。
M値=1000÷(20+40+2×5)=14.3
調整後M値=14.3×(5÷10)=7.15
次回トーナメントに参加する際は、このM値に気を付けてプレイしてみてください。これによって、トーナメントのどの段階でどのようにプレイする必要があるのかという事が大体わかります。
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