初心者編の集大成である、ハンドリーディングについて解説していきます。ここまで説明したハンドレンジの考え方や、ポジション、ボードテクスチャ、ベットの種類、相手のプレイスタイル等、これらを全て勘案して相手のハンドを読んでいきましょう。
ポーカーの基本原理でも説明したように、相手のハンドを知っている時に自分がするであろうアクションに近づいていく、これこそがポーカーです。相手のハンドを予想する事はポーカープレイヤーの必須スキルです。
まず、ハンドリーディングにおいて習得すべき3つのルールについて説明していきます。
その後、実際にどのようにハンドを読むのか?を実例を使って解説していきます。
では以下が3つのルールです。順を追って解説していきます。
- 相手のハンドレンジは狭まっていく
- 対戦相手のロジックを理解する
- 常に学び修正していく
1. 相手のハンドレンジは狭まっていく
プリフロップ以降、相手がアクションを行い情報が増える度に、相手のハンドレンジは狭まる(またはそのまま)事を意味しています。相手がリバーで急に強気にアクションしたからといって、ハンドレンジがリバーで急に広くなるという事はありません。
多くのプレイヤーはまだ未熟なプレイヤーだった頃、7♥6♦4♣K♥A♠ボードで、リバーで強気にアクションされ「もしかして相手は85を持っていてストレートを完成させていたのでは、、、」と思い、フォールドした経験があるかと思います。
しかし、相手がプリフロップで85でレイズするようなプレイヤーでない限り、そういったハンドを持ち得る事はありません。
未熟なプレイヤーはこれを見落とし、このようなボードで「85がナッツだから」という理由で、相手のハンドレンジに最悪のシナリオである85を入れたりします。
ハンドレンジはバッグのように出し入れするものではありません。レンジから出る事はあっても新たに入る事はありません。
この場合だと、相手が85をプリフロップでプレイしなければ、フロップ以降でそれを持っている事は絶対にないのです。
つまり、下の図に纏まっている通り、相手のハンドレンジはゲームが進むにつれ狭まるか、最悪の場合でもそのままのはずなのです。
3つ目のように、ゲームが進むにつれハンドレンジが広がる事は決してありません。

2. 対戦相手のロジックを理解する
もちろん対戦相手も何らかのロジックに基づいてアクションを起こします。
彼らはあなたと同じく、スタックの大きさやポジション、誰が自分のあとにアクションするか等を考えています。
あなたが、彼らの思考のプロセスも含めて考える事ができれば、精度の高いハンドリーディングが可能です。
例えば、ルースなプレイヤーと対峙した時、何を持っているか予想しにくいなと感じるはずです。なぜ難しいのでしょうか?
それは、彼らのロジックが我々のロジックとは全く異なるからです。彼らは「俺の好きな数字だ!」や「スーテッドだ!」等がアグレッションの根拠になっています。
こういったプレイヤーを相手にした場合は、フロップ以降で彼らがどのようにプレイしているかをよく観察し分析する事が最終的に利益をもたらします。
一方で、タイトなプレイヤーはプリフロップでハンドレンジをある程度絞る事ができます。彼らは常に合理的なアクションをします。
例えば、
- Q. 彼らがUTGからレイズした後、フロップA♠6♦2♣となりました。彼らが2ペアを作ったと考える事は合理的でしょうか?
- A. 合理的ではありません。A6やA2を彼らはUTGからプレイする事は少ないでしょう。
- Q. レイザーの後に4人がコールしています。熟練したプレイヤーが最後にBBでコールしました。この時BBはAA等のプレミアムハンドを持っているでしょうか?
- A. 99.9%持っていません。熟練したプレイヤーはAAといえども5人を相手にすると勝率が30%程になるのを知っています。
- Q. タイトアグレッシブなプレイヤーが75oで3betするでしょうか?
- A. しないはずです。ただ、3betした相手のハンドがクズ手だったという事は起こります。こういった事が起こった時、我々は最後のルールに頼る事になります。
3. 常に学び修正していく
これからポーカーをする度、あなたは相手のハンドレンジを真剣に考え、そのレンジに対してベストなアクションをするでしょう。
ただ結果として、相手は理解不能なランダムハンドでショウダウンしてくる事があります。
こういった時、「リーディングなんて役に立たない」と投げやりにならないで下さい。寧ろあなたは新しい情報を受け取ったのです。
この情報から学び、将来その相手ともう一度当たった時にそれを活かせばいいのです。
例えば、その相手がK5sなどでプリフロップレイズにコールしていれば、次回以降K5と同じくらいのハンドをレンジに加えましょう。
常に相手を観察し、情報を分析し、自分のプレイを調整していく。これの繰り返しがあなたのポーカースキルを上げる唯一の方法です。
以上が「ハンドリーディングする上での3つのルール」です。
ここからは、実戦でのハンドリーディング方法を説明していきます。
ハンドリーディングに使用する主な情報
ハンドリーディングに当たって、使用する主な情報は3つです。
- 相手のプレイスタイル
- 相手のポジション
- 相手のベッティングアクション
もちろんこれ以外にも、「テル」で説明するような事やトーナメントか否か等、使用できる情報は様々です。
しかし、この3つの情報無しでは絶対にリーディングする事はできません。それぞれを見ていきましょう!
1. 相手のプレイスタイル
プレイスタイルの章でも説明したように、相手には4つのプレイスタイルがあります。
相手のプレイスタイルによって、プリフロップのハンドレンジやその後の絞り方等が違うので、真っ先に分析すべき要素です。
タイトアグレッシブ
彼らは最も予測しやすいタイプです。ティルトになってない限り彼らが57等をプレイする事はなく、参加した時点である程度ハンドレンジを絞る事が可能です。
タイトパッシブ
タイトアグレッシブと同様、参加した時点でハンドレンジはある程度絞れます。
ただフロップ以降のアクションに消極的なのでアクションからハンドを絞る事が難しいです。
逆に言うと、彼らがベットやレイズをした場合はコンティニュエーションベットの可能性は低く、少なくともワンペア(特にトップペア)位は持っているはずです。
ルーズアグレッシブ
最も予測し辛い、かつ、(熟練したプレイヤーであれば)最も厄介なタイプです。
彼らは非常に幅広いハンドで参加してきます。その上、フロップ以降でアグレッシブに攻めてプレッシャーを与えてきます。
しかし、彼らに腹を立てて「どうせゴミハンドだろ」と思い、ブラフしたりする事は非常に危険です。
もちろん、殆どの場合彼らはフォールドするはずですが、彼らにもAAが配られる事があるのを忘れないで下さい。
ルーズパッシブ
このタイプは何を持っているか予想できません。27でも参加している可能性がありますし、アクションも消極的で情報が少ないです。
多くの場合、彼らはフィッシュです。彼らはドローがあればオーバーコールしてくれますし、例えドローイングデッドでも付いてきてくれたりましす。彼らは我々に大きな収益をもたらすタイプでもあります。
しかし、パッシブプレイヤーが攻めてきた時は注意が必要です。
2.& 3. 相手のポジションとアクション
「ポジション」と「スターティングハンドのレンジ」は密接に関わっています。
「悪いポジション」には「良いハンド」が必要で、「良いポジション」であればスターティングハンドのレンジを広げる事ができます。
つまり、相手のポジションによって、ハンドレンジを絞る事が可能です。
この時注意すべき事は、相手がポジションの重要性を理解している場合のみ、ポジションからハンドレンジを絞れるという事です。
海外カジノでエンカウントする「絶対フロップみるオジサン」等はこのポジションの重要性を知らないので、UTGだろうがBTNだろうが関係なく参加してきます。
また、アクションもポジションとセットで考えて下さい。
UTGのレイズは信用に足りる強いアクションですが、BTNのレイズはスチールを狙っている事も考えられ、本当に強いハンドが入っているかについては議論の余地があります。
このように、「相手のポジション」と「そのポジションでどのようにアクションしているか」をセットで考える事で、より正確にハンドレンジを絞っていきましょう。
実践問題
最後に、ハンドリーディングの実例を一緒に見ていきましょう。
あなたは2ドル/5ドルの500NLをプレイしています。UTGがプリフロップで15ドルにレイズしました。
では彼を少しタイトなプレイヤーとしましょう。
大体以下の様なハンドレンジでオープンしてきた事が予想できます。
対戦相手のハンドレンジ(プリフロップ):77+、JTs+、AQo+
あなたはBTNにいて、99でコールしました。SBとBBはフォールドしています。
フロップ(37ドル):8♠7♥2♦
対戦相手はCB20ドルを打ち、あなたはコールしました。
さて、この時相手のハンドレンジはどうなるでしょうか?
もちろん、相手によります。
- 彼がCBを100%打っているプレイヤーであれば、ハンドレンジはプリフロップと全く一緒です。
- 違うのであれば(殆どの人はCBを100%打ったりしません)、ハンドレンジは絞られる事になります。
では、何らかのペア、ストレートドロー、AKでCBをし、QJやKQなどの完全に外したハンドでチェックフォールドすると仮定しましょう。
この仮定に基づくと、対戦相手のハンドレンジ(フロップ)は77+、JTs、AKとなります。
最初に説明した通り、1度可能性を排除したハンド候補は2度と戻ってきません。ハンドレンジはバッグの様に出し入れする物ではなく、常に可能性を排除するだけの物です。
この状況で、「相手が22を持っていてセットを作っていたら」と不安になるのはナンセンスです。彼は22でプリフロップをレイズしないと想定したので、フロップで2が落ちたからといって恐れるべきではないのです。
ターン(77ドル):8♠7♥2♦6♣
さて、ターンは6でした、彼は50ドルを更にベットし、あなたはもう一度コールしました。
リバー(177ドル):8♠7♥2♦6♣A♠
リバーではAが落ちました。彼は50ドルをベットし、トリプルバレルをしてきました。あなたはどうしますか?
少し時間を取って、合理的に考えてみましょう。
フロップであなたはコールし、相手はターンで6が出た後セカンドバレルをしています。
- AKでセカンドバレルをするでしょうか?もしAKであればチェックする可能性が高いと想像できます。
- JTのストレートドローであればフォールドを期待してセミブラフを続けるでしょう
- オーバーペア(99-AA)もバリューベットするはずです。
ここまでの考察で、対戦相手のハンドレンジ(ターン)は77+、JTsとなっています。
しかし、リバーでAが落ちたらどうでしょうか?
- JTでストレートを引けなかった場合ブラフしてくるかもしれません。ベット額も小さいのでブラフと考える事は合理的です。
- では99-KKのポケットであればどうでしょうか?彼は負ける事を恐れてチェックするはずです。
- 77、88、AAのセットであれば引き続きベットするはずです。ベット額が小さい事が気になりますが。
つまり、彼がリバーでベットしたハンドはセットとブラフだけになります。
対戦相手のハンドレンジ(リバー):77、88、AA、JTs
図に纏めると以下のようなイメージです。ゲームが進むにつれ相手のハンドレンジは狭まっており、確りと絞る事ができています。

さて、最後にあなたはコールするかどうかを考えなければなりません。
この時考えるべき事は、相手に勝っている組み合わせと負けている組み合わせの数を比較し、ポットオッズと比較する事です。(ポットオッズについては中級者編でやりますので、今の時点では流し読みする程度で大丈夫です)
相手に勝っている組み合わせ:JTs
相手に負けている組み合わせ:77、88、AA
JTsの組み合わせはもちろん4通りです。スペード、クラブ、ダイヤ、ハートの4つです。
一方、ポケットの組み合わせは各々3通りで、合計9通りです。(スーツの1枚はボードに出ている為、組み合わせが少なくなる)
ここからあなたの99は4/13の確率で勝利する事になります。約30%です。
では、ポットオッズはどうでしょうか?
リバーのポットは177ドルで、相手は50ドルをベットしています。あなたは50ドルを払って、227ドルのポットを獲得する予定なので、
=227ドル:50ドル
=4.5:1
これを%に置き換えると、1/(4.5+1)=18%です。
この18%は金融で例えると損益分岐点になります。つまり、勝っている可能性が18%以上あれば、確率的にはプラスの収益を生むという意味になります。(ポットオッズは中級者編で詳しく見ていきますのでわからなくても安心してください)
あなたの勝率は30%だったので、あなたはコールすべき状況にいます。数学的に正しいアプローチはコールなのです。
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