アウツとオッズとは、数学的な根拠に基づいた判断をするための道具です。
数字の計算が少し出て来ますが、これを習得できれば非常に大きなスキル向上になる事は間違いありません。
既に「うわ、数学かよ、、、」と感じている読者の方もいる事は理解しています。ですが、ポーカーに関する数学で知っておくべき事はそれほど複雑ではありません。大体小学校高学年のレベルです。
注意:
可能な限りわかりやすく解説していきますが、もし途中で混乱してしまったりしたら、一度ペンと紙を用意して整理すると思いのほか単純な事をしていると気づくはずです。
それでも混乱してしまったら、この章は読み飛ばしてください。ポーカーは難しい勉強ではなく、楽しいゲームなのです。
あなたが経験を積んでいく過程で自然とポーカーで使う計算に馴染んでくるはずです。その後にこの章を読めばすんなりと頭に入ってくるはずです。
それでは解説していきます。
ポーカーをプレイしていて、自分のドローがどの位の確率で完成するのだろうと疑問に思った事はありませんか?
こういった時、フロップ以降で簡単に勝率を計算できる方法があります。
それが、「アウツ(これを引いたら勝てるというカード)の枚数」×「4倍(フロップ)」 or 「2倍(ターン)」という式です。これを4倍と2倍の法則と呼びます。
具体的に見ていきましょう。
あなたが8♥9♥を持っており、相手がA♣K♦を持っていたと仮定してみましょう。
フロップ:A♦10♣7♥と出た時、あなたには何枚のアウツがあるでしょうか?
あなたはストレートを完成させる8枚のカードがでれば勝つ事になるので、8枚のアウツがある状態です。
(アウツ:6♣6♠6♥6♦とJ♣J♠J♥J♦)
これを4倍の法則に当てはめると、8枚のアウツ×4倍(フロップ)=32%と、大体の勝率を計算する事ができました。
実際の勝率は35.35%であり、プレイに大きく影響しない位の誤差しかありません。
では、この後、
ターン:A♦10♣7♥8♣と出た場合はどうでしょうか?
あなたはストレートドローに加えてもう8か9が出てもトリップスとツーペアで勝利できます。
つまり、ストレートを完成させるための8枚のアウツに加え、2枚の8と3枚の9を加えた13枚のアウツを持っている事になります。
これを2倍の法則に当てはめると、13枚のアウツ×2倍(ターン)=26%となります。実際の勝率は29.55%であり、十分な精度ですね。
注意:この4倍と2倍の法則は多くのアウツが存在する時は実際の勝率との誤差が大きくなります。
例えば、フロップで15枚アウツを持っている時の勝率を計算すると60%だが、実際は55%です。
(こういった多くのアウツを持っている状況では、どのみち十分に勝率が高いので大抵問題にはなりません)
ポッドオッズ
ポーカーに出てくる主な計算が今から紹介するオッズ計算です。割り算しか出てこないので、最初は鉛筆と紙を用意してゆっくりと慣れていきましょう。
まず、ポットオッズとは何ぞやという所を説明します。
ポットオッズとは「勝った時に獲得する金額は、今あなたが直面しているベットに対してどの位大きいのか?」を意味する数字です。
ポットオッズ=「ポット全体のサイズ」と「あなたが直面しているベットのサイズ」の比率と表現する事もできます。
計算式では以下の通り表せます。
ポットオッズ=(ポット全体のサイズ÷コールするのに必要な金額):1
難しく考えないでください。例を挙げてわかりやすくしましょう。
Q. 相手が3ドルのベットをしてきました。あなたはこのゲームに勝てばポットの87ドルと、今相手がベットした3ドルを獲得する事ができます。ポットオッズはいくらでしょうか?
A. ポットオッズ=(ポット全体のサイズ÷コールするのに必要な金額):1=(87+3)÷3:1=30:1
これは簡単でしたね、「ポット全体のサイズ」は相手が今ベットした3ドルも含まれる事に気を付けて下さい。
では次にもう少し実践的な例題を見ていきます。
あなたと相手はお互い10ドルのスタックを持っていました。
プリフロップでお互いポットに5ドル入れており、ポット合計は10ドルです。
この時、あなたも相手もスタックは残り5ドルになっています。
フロップが出た後、相手は残りの5ドルをオールインしてきました。この時のポットオッズを計算してみましょう。
ポットオッズ=(ポット全体のサイズ÷コールするのに必要な金額):1=(15ドル÷5ドル):1=3:1となります。
※プリフロップの時点で既にポットは10ドルあり、相手がフロップで5ドルベットしたため、ポット全体のサイズはそれを足した15ドルとなります。
さて、この場合のポットオッズ=3:1は何を意味しているのでしょうか?
この数字が意味するのは「3回負けても1回勝てば収支はトントンになる」という事です。
つまり、金融の世界で言う損益分岐点を意味しています。ですが、この○対1という表記は正直分かりにくいですよね。
ではこれを%に直し、確率にするための式を紹介します。
損益分岐点の確率=1/(ポットオッズ+1)
今回の例だと、この確率は1/(3+1)=1/4=25%と計算する事が出来ます。
ポットオッズを介さずベットから直接損益分岐点の確率を出す事もできます。個人的にはこちらの方が計算が楽な場合が多くおススメです。
損益分岐点の確率=あなたがコールするのに必要な金額÷(ポット全体のサイズ+あなたがコールするのに必要な金額)
今回の例だと、5ドル÷(15ドル+5ドル)=5/20=1/4=25%と計算する事もできます。
つまり、あなたのハンドの勝率が25%であれば収支はトントン、25%以上あれば収支はプラスなので数学的にはコール、25%以下であれば収支はマイナスとなり数学的にはフォールドするのが正しいプレイという事になります。
あなたのハンドの勝率は既に4倍と2倍の法則で学んでいるため、簡単に計算できるはずです。
例えば、4倍と2倍の法則で求めたあなたの勝率が30%だとします。この時損益分岐点の確率は25%なので、あなたはコールすべきという事がわかるのです。
インプライドオッズ
まだあるのかよ!とならないで下さい。これが最後です。ただ、先程の「ポットオッズ」よりもう1段階複雑なので、ここまでに紹介したオッズやアウツを理解してから読み進めても構いません。
さて、あなたは既に上記で説明したオールインのような、あなたが危険に晒すチップがコールに必要な500ドルに限られている状況でのオッズ計算を学びました。
では、ターンやリバーに進み、相手が更にベットする可能性がある時はどうでしょうか?
これにはあとほんのちょっと複雑な計算が必要になり、それこそがインプライドオッズです。
実際に例を挙げながら説明していきます。
あなたのハンドはK♠Q♠で、既にターンに進んでおり、ポジションもあります。
ボードはA♠6♦2♥9♠です。
あなたはナッツフラッシュドローを持っており、相手は20ドルのポットに15ドルをベットしてきました。
さて、簡単にポットオッズ(損益分岐点の確率)を計算してみましょう。ポットオッズセクションで紹介した式を活用すると、
損益分岐点の確率=あなたがコールするのに必要な金額÷(ポット全体のサイズ+あなたのがコールするのに必要な金額)なので、
損益分岐点の確率=15ドル÷(35ドル+15ドル)=15ドル/50ドル=3/10=30%と計算できます。
しかし、あなたがフラッシュを完成させる確率はどうでしょうか?4倍と2倍の法則に当てはめましょう。
アウツは残っているスペードなので、全部で9枚あります。2倍の法則に当てはめると大体18%の確率でフラッシュを完成させれるようです。
つまり、30%の確率で勝てば収支トントンなので、あなたのハンドの勝率は30%以上である必要があります。
しかし、あなたのハンドは18%の確率でしかフラッシュになりません。この時、あなたの取るべきアクションはフォールドになります。
しかし、ここでフォールドする事は正解でしょうか?
ターンのベットにコールした後、リバーでも相手はベットしてきそうです。
つまり、リバーで相手から追加でチップを獲得できそうなので、コールするのもありじゃないでしょうか?
こういった時にインプライドオッズが登場します。
ターンでのコールを正当化するためには、リバーでいくら相手から取ればいいのかという事を式に入れて計算するのです。
インプライドオッズの式を見てみましょう。
インプライド損益分岐点の確率=今あなたがコールするのに必要な金額÷(ポット全体のサイズ+今あなたがコールするのに必要な金額+将来相手から獲得する金額)
ポットオッズの式と非常に似ていますね。
さて、これも先程の例に当てはめてみましょう。
先程の例だと、勝率が18%に対して損益分岐点の確率は30%だったのでフォールドが正解という結果になりました。
では「インプライド損益分岐点の確率」を考えてみましょう。
式にすると以下のようになります。
インプライド損益分岐点の確率=15ドル÷(35ドル+15ドル+将来相手から獲得する金額)
この時左辺のインプライド損益分岐点の確率が、フラッシュを作る為に必要な18%以上あればあなたはコールできます。これも併せて考えると、
0.18=15ドル÷(35ドル+15ドル+将来相手から獲得する金額)
と考える事ができます。
後はこの式を解き、「将来相手から獲得する金額」=33ドルと計算できます。
つまり、ターンでのコールを正当化するには、フラッシュを引いた時に33ドル以上相手から獲得すればよいという事を意味しています。
ターンでフラッシュを引いたとして、ポットには50ドルがあります。
相手から33ドル引き出すという事は、ポジションがある状態で相手からポットの66%を引き出すという事です。
相手がTPTK(トップペアトップキッカー)やツーペア、セットであれば引き出せそうですね。
もし引き出せなかった場合、あなたのプレイは数学的に間違いとなってしまいます。
少し難しかったと感じる人が殆どだと思います。安心してください!ポーカーにおいてはこれ以上に複雑な計算は出て来ません。
インプライドオッズ関連の計算がポーカーにおいては最も複雑なパートになります。
もちろん、「意味はわかったけどハンドをプレイしながら出来る気がしない、、、」と思われる方が多いと思います。それで大丈夫です。
この記事を書いている私ですら、未だにオッズ計算する時は少し時間がかかりますし、時々「よくわかんねーけどインプライドオッズありそう!コール!」みたいにプレイする時もあります。
要するに、普段からこういった計算に慣れておく事でいざという時に確りと使えるようにしておく事が大事なのです。
ではいくつか練習問題を用意したので、是非挑戦してみてください。
練習問題
ブラインドにおけるプリフロップのアクション
あなたは1ドル/2ドルの9人ゲームをプレイしています。
あなたはBBでハンドは5♠7♠です。BTNまで全員フォールドし、BTNが6ドルにレイズしました。
あなたはこの時どうするのが数学的に正解でしょうか?ポットオッズを計算してどのくらいの確率が必要なのか明らかにしてみましょう。
損益分岐点の確率=あなたがコールするのに必要な金額÷(ポット全体のサイズ+あなたのがコールするのに必要な金額)
を使って考えます。あなたはBBなので、コールするためには4ドル必要です。ポット全体のサイズはBTNの6ドルとSBの1ドル、BBの2ドルで合計9ドルです。
つまり、損益分岐点の確率=4ドル÷(9ドル+4ドル)=4/13=0.308=30.8%となります。
これの意味する所は、BBのコールだと30.8%の勝率があればあなたはコールしてもよいのです。
例えば、相手がスチールを頻繁に試みる相手であなたが相手のハンドレンジは上位約50%と予想したとします。(濃い青色のハンド)

ソフトによる計算では、それらのレンジに対して、5♠7♠は38.12%の勝率があり、コールする事は肯定されます。

※ソフトはPokerStrategyさんのエクイラボというものです。ダウンロードしておくと便利です。
実際には、5♠7♠で参加しても、ポジションがない事やヒットしてもボトムヒット等であれば降ろされてしまう可能性がある事を鑑みて最初はオッズが合うからという理由だけで参加するのはおススメしません。
ドローにおけるオッズ計算
先程と同じ状況を考えましょう。あなたは1ドル/2ドルの9人ゲームをプレイしており、BBでハンドは5♠7♠です。BTNまで全員フォールドし、BTNが6ドルにレイズしました。
あなたはオッズが合うと考え、コールを選択しました。
フロップ(13ドル):A♠2♠8♣
あなたはチェックし、ボタンは8ドルをベットしました。この時あなたはコールできるでしょうか?必要な勝率を計算してみましょう。
損益分岐点の確率=あなたがコールするのに必要な金額÷(ポット全体のサイズ+あなたのがコールするのに必要な金額)に当てはめると、
損益分岐点の確率=8ドル÷(21ドル+8ドル)=8/29=0.276=27.6%となります。つまり、27.6%以上の確率で勝利できればあなたのコールは正当化されます。
フラッシュを作る為には残っている9枚のスペードが必要です。4倍の法則に当てはめると、9×4=36%となり、あなたはコールすべき状況に居る事がわかります。
もう少し実践的な話にも触れてみます。
もしあなたがターンでフラッシュを作れず、相手がベットしたらフォールドしなければならないというシナリオももちろんあります。
こういった場合、相手がAをヒットさせており、ターンでも殆どの場合ベットされると考えると、あなたは4倍の法則ではなく2倍の法則に当てはめた方がいいかもしれません。
ターンで相手のベットにコールできるカードはなにでしょうか?
まず、フラッシュを作る9枚はもちろん、オープンエンドストレートドローを作る6もこちらに嬉しいカードです。これらはスペードを除くと3枚あります。
するとあなたのアウツは9枚(フラッシュ)+3枚(ストレートドロー)=12枚となり、2倍の法則に当てはめると24%なので少したりません。
ただ、相手が何もヒットしていないコンティニュエーションベットの可能性も少しだけあると考えましょう。このシナリオだと、ほかにも、5と7が6枚残っているはずです。これらも考えるとコールしてもよさそうです。
BBでコールした際のインプライドオッズ
あなたはBBでハンドは7♦J♦です。BTNとあなたしか残っておらず、フロップであなたはBTNのCBにコールしています。
ターン(67ドル):K♦10♦3♠2♥となり、BTNはセカンドバレルとして50ドルをベットしてきました。
この時、あなたとBTNのスタックは十分に残っているものとします。
さて、この時相手のダブルバレルにコールしてもよいでしょうか?
ポットオッズを計算してみましょう。
損益分岐点の確率=あなたがコールするのに必要な金額÷(ポット全体のサイズ+あなたのがコールするのに必要な金額)に当てはめると、
損益分岐点の確率=50ドル÷(117ドル+50ドル)=50/167ドル=0.299=30%
となっているので、30%の勝率が必要です。しかし、フラッシュにハンドが進展する確率は18%なので、コールはできません。
では、インプライドオッズの式を使って、リバーでフラッシュを完成させたときに相手からどれだけ追加でチップを引き出せばよいのか考えてみましょう。
インプライド損益分岐点の確率=今あなたがコールするのに必要な金額÷(ポット全体のサイズ+今あなたがコールするのに必要な金額+将来相手から獲得する金額)に当てはめ、
0.18=50ドル÷(117ドル+50ドル+リバーで相手から引き出す金額)
となります。
この式を解くと、リバーで相手から引き出す金額は111ドルとなり、リバーに進んだ時点でポットが167ドルある事を考えると、ポットの66%の金額です。そもそも、もし相手の残りのスタックが111ドル以下であれば、もちろんターンであなたはコールしてはいけません。
さて、あなたはリバーでフラッシュを完成させた場合、相手からこのポットの66%の金額を引き出せるでしょうか?
この金額を相手から引き出すためには以下のアクションをする必要があります。
- ドンクベット
- ドンクベットする場合、111ドル以上のベットを行う事になります。例えば120ドルをベットしたとすると、BTNからみると、セカンドバレルまでして強さを主張していたにも関わらず、3枚目のダイヤモンドが出た途端ドンクベットをされた事になります。コールしてくれるかどうか微妙な所です。
- チェックコール or チェックオールイン
- さて、3枚目のダイヤモンドが出た後BTNがしっかりとベットしてくるでしょうか?
もしあなたがBTNだったら、チェックして安全にショウダウンを選ぶ方がいいと思うはずです。 - もしBTNがベットしたとしても、111ドル以下であれば、あなたはチェックレイズする必要があります。
このチェックレイズにBTNはコールするでしょうか?明らかにしないでしょう。トリプルバレルにチェックレイズを入れれるのはナッツを持っている時でしょう。
つまり、あなたより強いフラッシュを完成させた時だけコールされます。
- さて、3枚目のダイヤモンドが出た後BTNがしっかりとベットしてくるでしょうか?
さあ、ここまでの議論でわかった通り、インプライドオッズの解説で挙げたK♠Q♠の例とは異なり、ポジションがない事やナッツフラッシュでない事等の理由によって、リバーで必要な金額を相手から引き出す事は非常に難しいと思われます。
これが、インプライドオッズを考慮してもこういった弱いドローハンド、弱いポジションでコールしにくい理由です。
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